2010年8月30日月曜日

『心理経済学』

先々週くらいに読み終えていた『心理経済学』(著:大前研一)について。
この本は、色々な大前学長の講義で取り上げられていたので、早く読んでみたかったが課題図書が他にも沢山あり、卒業間際になって漸く読めることになった。
今まで講義で何度も言われていたことだったので、今までの本とは異なっていて良く理解出来たように思う。

メッセージは、至ってシンプルで副題にもなっているけれど、「貯めるな!使え!」ってことだと思う。これは一個人としても、家族にとっても、また日本国家にとっても同様であると思う。

日本人はバブル崩壊後、経済が傾き、長期低迷に入り、収入が減り、リストラされ、皆が口を揃えて「お金が無い」と言ってきた(中にはITバブルで一気に稼いだ人もいた)。しかしながら、全てが低迷(もしくは横ばい)の中、唯一と言っていいほど、右肩上がりで成長してきたものがある。
それが、個人金融資産。すなわち貯蓄とか。

現在、約1,400兆円が貯蓄されていて(このうち1,000兆円が現金で銀行や郵便局に貯蓄されており、400兆円がローンなどに当たる。)、定年後に退職金含めて一人当たり約2,500万円。年金の3割を貯蓄に回して、貯め続け、3,500万円残して亡くなっている統計になっている。
これは正に衝撃の事実かと思う。

貯蓄する理由は「イザと言う時のため!」としているが、そのイザが来ないまま、ほとんどの人が亡くなっている。頑張って働いて、切りつめて貯蓄しているのに、使わずに亡くなっている。そして相続税とかで、税金として国に持ってかれているようだ。あぁ、何てもったいない、と正直思った。

ちなみに、老後に介護が必要になるのは全体の2~3割のようだから、ほとんどの人が元気に老後を暮らしていることになる。
こうロジックで攻め立てられると、ある程度貯蓄をした後(60歳以上は今すぐにでも)は、ドンドンお金を使った方が良いのだろう。もちろん無駄づかいでなくて、やりたいことは全部やる的な発想で。

もちろん、若くして亡くなる人もいるし、病気になる人もいるから、上記に当てはまらない人もいるけれど、そういう人にしっかりと医療や介護などの福祉に関わる税金を使えるように、元気な人はお金を使って経済を回して行くことが、結果として万人の幸せになるんだろうと思われる。

この本では、老後の過ごし方として「アクティブシニアタウン」についてや、貯金でなくて資産の運用の仕方とか、日本人が陥りやすい集団IQの低さにも触れられている。

読み始めは、本当に経済学書か!?と思うほどにデータが多いが、だんだん解決策についてシフトしてくるので読みやすくなっている気がする。

それにしても、色んな事考えているよな…、そして、こんな早くから気付いていたのか…と改めて大前研一の偉大さ・大きさ(体も顔もでかいけど、実際に会ったし)を痛感するのである。

2010年8月28日土曜日

プレゼンが終わり・・・

今週の火曜日(24日)に学長(大前研一)の卒業研究の審査を受け、ただ今休憩中。少し身も心もリフレッシュしようと部屋の掃除から始めている。

仕事にも本腰を入れて、そして来月から本格的に英語を勉強しようとBBTの継続教育としてプログラムに申し込んだけど、これまた結構ハードで、また同じような生活がもう1年続くのかな・・・と少し嫌気がさしかかっているけど、どの道やらなきゃいけないことなのでサッサとやってしまおうと思っている。10月から人事異動の関連で、仕事がまた増えちゃうから、忙しくなるのは間違いなさそう。更に巡り巡って年上の契約社員の教育係になるようだし(先日リーダーに打診された)、早速逆転現象を経験できるある意味有りがたい状況に身を置けるようになった。

大前学長の審査は、事業計画を5分間で説明し、フィードバックや質疑が10分の計15分と僅かな時間。結局、僕の場合は30分くらいになった。コンサル料が1時間500万円と言われているから、250万円分の有りがたい時間を僕一人の為だけに頂いたことになる。そう考えると、やはりBBT大学院というものはかなり異質の大学院だと振り返ってみて思う。

フィードバック中は、「中学レベル」とか、「業界の人間とは思えん発想(今働いている製薬業界の内容にしている)」と、中々厳しい突っ込みもあったけど、「まぁ、こんな青いこと言えるやつも必要かもしれないな…」とこぼしていた(これをどう捉えるかは、人それぞれだけど)。

質問が鋭すぎるし、「○○検討したか?」「△△になったらどうする?」がどんどん出てきて、はっきり言って1割程度しか答えられていない。

控室で撃沈したクラスメイトが沢山いて、なぜか自分が
「初めて作った事業計画なんですから、上手くいかなくて当然ですよ!」
「今失敗したって平気ですよ、これを本業で生かせば良いんです。あくまで大学院なんですから!」
とめっちゃ励まし&慰めをしていたが、自分は最終日の一番最後だったので、終わった後誰もおらず、スタッフの人が「気を付けてお帰り下さい~」と事務的な挨拶だけだったので、誰かに自分が言ったことを言ってもらいたかった気分だったかな。


それにしても、振り返ってみるととても良い勉強&経験になった。
質問内容も準備していれば答えられたものも結構あったことに今更ながら気づいている。決して未検討だったわけでなく、「頭の回転が付いて行っていない」、そして「5分間のプレゼンの内容が見当違いだった」ということが大きな原因と思う。

BBTの場合は、オンラインでのディスカッション、そして大半の試験が論文を1週間以内に提出する(中には2時間で提出というものもある)ものだから、常にじっくり考えて、自分の考えをまとめて発言及び提出することが出来る。だから、じっくり考える力や、分かりやすい文章やチャート作りは相当鍛えられたと思う。
一方で、その場での即答などは弱い。
これに関しては、通常の仕事中にお客さんと話すときに鍛えられるけど、人間関係が出来てしまうと何とかなってしまうし、社内でもインフォーマルなコミュニケーションが多かったりするから、少し違うのかもしれない。意識してロジックでディスカッションする機会を作るか、設定しないと鍛えられない。
これからの、大いなる課題のような気がしている。

話は戻って、上手く答えられなかったのは、もちろん、全く理解できていない、検討していない部分もあったし、「大前研一の空気に飲まれた」、「モンゴルから帰国4時間後だった」というのも一部原因としてはあるけど。。

兎にも角にも、完全燃焼したプレゼンかどうかは分からないけれど、今の実力通りの力は出ているんだろうと思う。

結果はもう時期発表される。


さて、どうなることやら。

2010年8月10日火曜日

『出世力』

BBTのプレゼントでたまたま当たった『出世力』。最近は、めっきり上司の評価に対して興味が無くなっていたけど、折角なので読んでみたが、改めて“評価”“出世”というものを考えるきっかけになったかな。

内容として、特に印象深かったものを上げておこうと思う。

■結果=成果ではない。

成果=結果+第三者の評価、であるから、いくら自分が出した結果に対してアピールしても、人事評価が成果主義であれば全くと言っていいほど役に立たない。第三者(=上司)の評価がそこに加わって“成果”になるからだ。

そこで出てくる輩が「ゴマすり族」。確かに大した結果でなくても、上司の評価が加わって成果になるから、出世していく。しかしながら、あるポジション(職制など)に行くと実力が無いので結果が出せない。そしてあえなく降格していく。


■周りは気にせず気楽に働く、なんていうことは出来ない。

出世すればするほど自由が手に入る。自分の好きなように仕事を進めることが出来る。
であるから、評価を受けず出世をしないということは常に誰かの監視下にあり、締め付けられていることに相違ない。
派遣社員に関しても、成果を出せば会社から喜んで延長してもらえ、中には正社員となることもある(望む望まないは別にして)。成果が無ければ、延長はない。不景気になれば真っ先に切られるのが派遣者にんであることに変わりはない。正社員は縛られるから嫌だ、というのもある意味正しいが、職がなくなって困るのは自分自身である。

評価を気にせず気楽に働くなんてことは現実的ではない。



■議論が先か、行動が先か、⇒行動あるのみ

賛否両論あるが、結局PDCAサイクルを“回し続ける”ことが成長に繋がるわけだから、議論と行動はどっちが先でも良い。はっきり言えることは行動しないと、次の議論が出来ないということ。だったら行動してしまえばいい。


■成長が感じられないと評価を受けられない

新しい仕事について慣れてくるとそれがルーチンになってくる。以前と比べれば自分が成長した証である。しかしながら、上司はそう思わない。まだルーチンワークをこなしているだけ、という評価を下す。だから、ルーチンに埋没してはならない。常に新しいことをして“変化”や“成長”を周囲(=上司)に示していかないと、評価は受けられない。延びしろがなさそうな人間を出世させることはあり得ない。



■上司の指示の悪さを嘆くのは無意味である

上司は思いつきで指示をするもの。その時にどう対応するか。

1)おかしな指示は受け流しつつ、表面は対立を避ける
2)忠実に実行して深みにはまる
3)喧嘩してサボタージュする

正解は1)である。
誤った指示に従うのは組織にとってもマイナス以外何物でもない。それが忠実な部下である、と考えるのはおかしい。組織にマイナスなんだから共倒れになる。かといって、喧嘩するのは愚の骨頂。上司に反抗しているというレッテルを張られるだけ。催促されるまで指示を塩漬けにしてしまうくらいで丁度いい。

これは決してネガティブな対策ではない。無能な上司との付き合い方もその人間の能力だ。視点を変えて対応することと同じである。あんな上司の下でまともに働いて大したもんだ、という更なる第三者の評価を受けるきっかけにもなる。


こんなところかなと思う。
もちろん人によって印象は異なると思うけど、結果≠成果というのは、とても納得のいく内容で、その他もロジックで説明している感じが頭に入りやすく、読みやすかった。

実際やっていることは何にも変わっていないのに上司が変わったとたん評価が上がる人と、下がる人がいる。こんなもんかなと思う。もちろん、一方でいつも高い人もいる。

ただ、結局、自分でコントロールできるところは“結果を出す”ということだけだと思うので、客観的に周りを見て、客観的に仕事ややるべきことを見極めて取り組むことに集中すればいいんだということが良く分かった。

そんな思いにさせる本でした。

2010年8月5日木曜日

無事に卒研提出!⇒プレゼン準備へ

先週末に無事に卒研提出した。

テーマは製薬業界の国内の流通改革。
副題は日本企業が世界と戦うためのメーカー主導の業界再編とした。

1年がかりで作って、自社関連でもあり、担当教授とここ半年で2回コンサルを受けたけど、その度にどんどんテーマが大きくなり、最後は「業界再編」まで辿りついてしまった。途中は国家戦略を考えているんじゃないかと思っていたけど、結論としては「市場」と「国家」は相反するところがある(調べて感じた)から、方向性は同じでもやり方が異なってしまうので、あくまで「市場」の立場で取り組んでみた。

卒業生の話だと、テーマを大きくしたいけど出来ない、というパターンの方が多いみたいだからある意味恵まれてるのかも、と思った。かなりしんどかったけど。。


やや月曜から燃え尽き症候群だった。
でも、今月中旬過ぎに大前研一の前で5分間のプレゼンをする。
今週末までにプレゼン用に10枚のPPTにまとめて提出しないといけないから、燃え尽きている場合じゃなかった。昨日から作っているけど、中々難しいね。
卒研自体が50枚になっているから、どのスライドが良いのか少し迷う。

多分、エッセンスや短縮版をプレゼンしても意味がなく、50枚に纏めた卒研の価値をもっとも高めることが出来るスライドを10枚選ぶ、または作ることになるんだと思う。
10枚で5分だから、余計なことは言えない。
1年がかりで取り組んできても、5分間で伝えられず水の泡になる可能性もある。
折角ここまで苦労して仕上げたんだから、しっかりと伝えたい。

どこが、どうして、どのように、従来のものと違うのか?
という点がポイントなんだろうな。

クラスの人は卒研で仕上げているんだから、10枚に纏めるのは簡単、と言っていたけど、ちょっと違うんじゃないかと思ってる。

プレゼンってもっと奥が深いと思う。
プレゼンの良し悪しで印象が全く変わってしまう。
中身が一緒でも、どれだけ時間を費やしても、それだけ素晴らしい考えだとしても、素晴らしい文章を書けたとしても、、、。
結局、人が動かないと意味がないから、プレゼンで聞き手を納得させる、そして行動させられるかがプレゼンの本来の意味だろう。


そして相手は大前研一だぞ。

2010年8月4日水曜日

ケーススタディー(東根市)

一週飛ばして、先々週のケーススタディー。
結構頑張って議論した。

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【課題】
あなたが山形県東根市のJAとすれば世界各地で佐藤錦もどきのサクランボが続々と登場している現状にどのように対処していくか?

【回答】
レーニアを競合しないように時期をずらして販売する。
その為にオーストラリアの農地を利用して12月~1月に日本に逆輸入する形をとる。

山形で取れる6~7月の佐藤錦は、中国の富裕層や日本の贈与品のみとして生産量を少なくしてプレミア付けて販売する。
余った山形の農地で、可能ならアメリカにわたってGEE WHIZ等を勉強して新たな品種改良や技術の習得に励むために活用する。

【理由】
「佐藤錦」はさくらんぼの王様として高級種として日本で親しまれている。近年では中国の富裕層が購入するなどそのブランド力と味は目を見張るものがあると言える。さくらんぼは山形県で日本の72%を占める収穫高であり、当然山形の東根市のJAはさくらんぼを前面に出し、かつ看板商品がこの「佐藤錦」である。

しかしながら、2009年に農水省が米国産のさくらんぼの輸入を解禁し、アメリカンチェリーでなく佐藤錦とそっくりのさくらんぼ「レーニア」等が参入してきた。レーニアは佐藤錦より更に粒が大きく、糖度や酸味も高く味は互角と言っても過言でなく、かつ佐藤錦よりも低価格での販売となっている。アメリカ産であるため時期も同時期で競合し、生産量も圧倒的にレーニアのほうが多い。
現在ブランド力はないが、脅威であることには変わりない。

ではどうするか?
現在の消費者の傾向を見ると、価値のあるものにお金を出すがそれ以外は低価格志向である。佐藤錦に顧客を動かすほどの価値を提供し続けられるか?と考えた場合、佐藤錦が行う事業展開をそっくりそのままレーニアに真似されたら、上記のような状況では大半は勝ち目がないと考えられる。

よって、競合しない方法を考えたい。

佐藤錦は山形産であるが、オーストラリア産の佐藤錦も市場に出回っている。よって、このオーストラリアでの生産と販売をJAが取得し、日本において12月~1月に販売するとこで直接レーニアを競合することなく「冬の佐藤錦」として生き残りを掛ける。

山形産の佐藤錦は、従来通り中国の富裕層向けや贈与品としての価値があるため、生産量を絞ってプレミアを付けて高価格で販売していく。
余った農地に関しては、更なる品質改良のための実験場にし、可能であればJA職員が米国産のさくらんぼの勉強に渡米し、帰国後の実践の場として利用したい。

【参考】
・さくらんぼ収穫量
http://www.teikokushoin.co.jp/statistics/japan/index33.html
・レーニア
http://www.asahi.com/food/news/TKY200906160196.html
・季節のフルーツ
http://www.fruit7.net/winter.htm
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【大前解説】
■日本市場
・山形といえばさくらんぼ、そのさくらんぼのチャンピオンが佐藤錦。
・生産の70%が山形県であり、その内佐藤錦が75%。
・国内市場(生産)は1.5万トンくらいで横ばいで、輸入しているアメリカンチェリーとは住み分けされている。
・佐藤錦は「種」だから、どこでも作れるようになっている。
・海外に佐藤錦を持ち出して、色んなところ(オーストラリアとか)で作れるようになっている。
・現在の輸入の99%は米国から。
■世界市場
・さくらんぼは日本のものではない。欧州が最も多い。
東欧、南欧、オセアニア、中東、アメリカオーストラリアなどが大きい。
⇒日本は1.7万トンで世界第23位。トルコが33.8万トンで第1位。(2位はアメリカとイランで22.5万トン)
⇒さくらんぼと言えば日本のもののように見えるが、実際は輸入を規制していたからで、本当は海外が最も多い。
⇒日本は本当においしいさくらんぼを知らない!?

・海外では佐藤錦は人気がない。
⇒佐藤錦でなく安いレーニエを選んでしまう。
⇒日本はブランドでバイアスが掛かっているから人気があるだけ。
⇒日本人の味覚は、イメージから来る。和牛と言うだけでおいしいと思ってしまう。

よって、
佐藤錦は日本の幻の中で生きているだけで、第3者の客観的な評価ではないし、おいしいことは間違いないが、値段は正当でない。

収穫作業の日当を比較すると、、、
・山形県:7000円~15000円
・中国 :200円~300円

⇒労働集約型。中国でも7.2度が1400時間必要という条件を満たしている。あっちでやられたら勝てっこない。
⇒更に、JAには184人もいる。
⇒俺(大前研一)に80人くれたら世界戦略をしてやるよ!!

問題は・・・
・生産コストが高く、色んなところで佐藤錦が出来るようになり、収穫の効率が悪い。
・外国で取れた佐藤錦も入ってきて国内で競争が激しくなった。
・また、海外では「小さい、酸っぱい」と評判悪い。

■故に、解決策としては…
・東根市としては、もう少し選んで別ブランドを作る
→佐藤錦が広がり過ぎている。範囲を狭める。
・海外生産⇒中国などで作れるように頑張る。
⇒生産に成功すればレーニアも中国に持ってきてやる。そして輸入業者になる。
→今のスタッフ人数がいれば出来る。

■まとめ
・東根があまりにも危機感がない。
→茹でガエルの典型例。
・さくらんぼは、500円~1000円が世界の当たり前なのに、日本人は5000円~10000円が当たり前だと思っている。

【まとめ、反省】
卒研提出前のケーススタディーはとても手が付けられなかったので授業期間中に参加したケーススタディーはこれが最後になった。
積極的に参加していたので、良い議論が出来たと思う。
一方で、世界のさくらんぼ市場の確認不足があり、また日本人の味覚はイメージで決まる、という日本の真実には気が付いていなかった。相変わらず大前学長はすごすぎる。
回答の方向性は違ったけど、自分の案もまぁ良いんじゃないかと思ったりする。
ま、中国陣営が台頭しても季節ずらしているから、競合しないしね。