2010年8月4日水曜日

ケーススタディー(東根市)

一週飛ばして、先々週のケーススタディー。
結構頑張って議論した。

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【課題】
あなたが山形県東根市のJAとすれば世界各地で佐藤錦もどきのサクランボが続々と登場している現状にどのように対処していくか?

【回答】
レーニアを競合しないように時期をずらして販売する。
その為にオーストラリアの農地を利用して12月~1月に日本に逆輸入する形をとる。

山形で取れる6~7月の佐藤錦は、中国の富裕層や日本の贈与品のみとして生産量を少なくしてプレミア付けて販売する。
余った山形の農地で、可能ならアメリカにわたってGEE WHIZ等を勉強して新たな品種改良や技術の習得に励むために活用する。

【理由】
「佐藤錦」はさくらんぼの王様として高級種として日本で親しまれている。近年では中国の富裕層が購入するなどそのブランド力と味は目を見張るものがあると言える。さくらんぼは山形県で日本の72%を占める収穫高であり、当然山形の東根市のJAはさくらんぼを前面に出し、かつ看板商品がこの「佐藤錦」である。

しかしながら、2009年に農水省が米国産のさくらんぼの輸入を解禁し、アメリカンチェリーでなく佐藤錦とそっくりのさくらんぼ「レーニア」等が参入してきた。レーニアは佐藤錦より更に粒が大きく、糖度や酸味も高く味は互角と言っても過言でなく、かつ佐藤錦よりも低価格での販売となっている。アメリカ産であるため時期も同時期で競合し、生産量も圧倒的にレーニアのほうが多い。
現在ブランド力はないが、脅威であることには変わりない。

ではどうするか?
現在の消費者の傾向を見ると、価値のあるものにお金を出すがそれ以外は低価格志向である。佐藤錦に顧客を動かすほどの価値を提供し続けられるか?と考えた場合、佐藤錦が行う事業展開をそっくりそのままレーニアに真似されたら、上記のような状況では大半は勝ち目がないと考えられる。

よって、競合しない方法を考えたい。

佐藤錦は山形産であるが、オーストラリア産の佐藤錦も市場に出回っている。よって、このオーストラリアでの生産と販売をJAが取得し、日本において12月~1月に販売するとこで直接レーニアを競合することなく「冬の佐藤錦」として生き残りを掛ける。

山形産の佐藤錦は、従来通り中国の富裕層向けや贈与品としての価値があるため、生産量を絞ってプレミアを付けて高価格で販売していく。
余った農地に関しては、更なる品質改良のための実験場にし、可能であればJA職員が米国産のさくらんぼの勉強に渡米し、帰国後の実践の場として利用したい。

【参考】
・さくらんぼ収穫量
http://www.teikokushoin.co.jp/statistics/japan/index33.html
・レーニア
http://www.asahi.com/food/news/TKY200906160196.html
・季節のフルーツ
http://www.fruit7.net/winter.htm
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【大前解説】
■日本市場
・山形といえばさくらんぼ、そのさくらんぼのチャンピオンが佐藤錦。
・生産の70%が山形県であり、その内佐藤錦が75%。
・国内市場(生産)は1.5万トンくらいで横ばいで、輸入しているアメリカンチェリーとは住み分けされている。
・佐藤錦は「種」だから、どこでも作れるようになっている。
・海外に佐藤錦を持ち出して、色んなところ(オーストラリアとか)で作れるようになっている。
・現在の輸入の99%は米国から。
■世界市場
・さくらんぼは日本のものではない。欧州が最も多い。
東欧、南欧、オセアニア、中東、アメリカオーストラリアなどが大きい。
⇒日本は1.7万トンで世界第23位。トルコが33.8万トンで第1位。(2位はアメリカとイランで22.5万トン)
⇒さくらんぼと言えば日本のもののように見えるが、実際は輸入を規制していたからで、本当は海外が最も多い。
⇒日本は本当においしいさくらんぼを知らない!?

・海外では佐藤錦は人気がない。
⇒佐藤錦でなく安いレーニエを選んでしまう。
⇒日本はブランドでバイアスが掛かっているから人気があるだけ。
⇒日本人の味覚は、イメージから来る。和牛と言うだけでおいしいと思ってしまう。

よって、
佐藤錦は日本の幻の中で生きているだけで、第3者の客観的な評価ではないし、おいしいことは間違いないが、値段は正当でない。

収穫作業の日当を比較すると、、、
・山形県:7000円~15000円
・中国 :200円~300円

⇒労働集約型。中国でも7.2度が1400時間必要という条件を満たしている。あっちでやられたら勝てっこない。
⇒更に、JAには184人もいる。
⇒俺(大前研一)に80人くれたら世界戦略をしてやるよ!!

問題は・・・
・生産コストが高く、色んなところで佐藤錦が出来るようになり、収穫の効率が悪い。
・外国で取れた佐藤錦も入ってきて国内で競争が激しくなった。
・また、海外では「小さい、酸っぱい」と評判悪い。

■故に、解決策としては…
・東根市としては、もう少し選んで別ブランドを作る
→佐藤錦が広がり過ぎている。範囲を狭める。
・海外生産⇒中国などで作れるように頑張る。
⇒生産に成功すればレーニアも中国に持ってきてやる。そして輸入業者になる。
→今のスタッフ人数がいれば出来る。

■まとめ
・東根があまりにも危機感がない。
→茹でガエルの典型例。
・さくらんぼは、500円~1000円が世界の当たり前なのに、日本人は5000円~10000円が当たり前だと思っている。

【まとめ、反省】
卒研提出前のケーススタディーはとても手が付けられなかったので授業期間中に参加したケーススタディーはこれが最後になった。
積極的に参加していたので、良い議論が出来たと思う。
一方で、世界のさくらんぼ市場の確認不足があり、また日本人の味覚はイメージで決まる、という日本の真実には気が付いていなかった。相変わらず大前学長はすごすぎる。
回答の方向性は違ったけど、自分の案もまぁ良いんじゃないかと思ったりする。
ま、中国陣営が台頭しても季節ずらしているから、競合しないしね。

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