2010年3月17日水曜日

ケーススタディー(ブリヂストン)

引き続きケーススタディー。ブリヂストンはモスクワに行ったときにお世話になった先輩が働いているので、かなり率先して取り組んで、財務分析は全部一人でやった。回答も良く考えられたと思う。もちろん大前解説のほうがかなり素晴らしかった。「やってはいけないこと」が今回のポイントだった。

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【課題】
あなたがブリジストンの荒川詔四社長とすればご多分に漏れず中国勢の台頭にどのように備えるか?

【回答】
地元ディーラーに強い中国メーカーを販社ごと買収し、低価格タイヤを他ブランドで販売する。また他の新興国に関しても順次地元ディーラーに強い販社などと提携を行い販売網を増やし、売上増加及び原価率低下を目指す。
高品質タイヤに関しては、再生タイヤなど環境問題に対応するものの販売を継続していく。

【理由】
(キャッシュフロー分析より)
ブリヂストンの主事業は全体の約8割を占めるタイヤ事業である。
今まで原価率が高騰する中、販売額・数を増やし利益を確保してきたが、リーマンショック後の消費の冷え込みや自動車販売台数の不振により大きく売上を落とし、更に低価格の中国メーカーのタイヤが頭角を現しシェアを侵食した結果、収益が悪化している。
一方CFは安定している。

■自社
ブリヂストンの強みは世界に誇るブランド力と品質(技術)が強みであり、質の高いタイヤを先進国の外国車(日米欧車)中心に販売している。
■市場
先進国の外国車(日米欧車)に加えて、新興国(BRICSなど)での外国車や地元メーカー車など種類は多様化し、市場は大きく変化している。
新興国では、中間~低所得者は低価格車に乗車するケースが多いと考えられ必然的にタイヤも低価格(手の届く範囲)を求めている様子が見受けられる。
■競合(中国メーカー)
低価格のタイヤを先進国及び新興国や中間~低所得層などに対して販売していると考えられる。

以上より、ブリヂストンは現在のターゲット市場だけでは将来的な事業拡大が困難と考えられるため、中間~低所得者(低価格車など)をターゲットとした販売を検討する必要がある。

よって、円高かつCFも十分にあるため中国メーカー(選定は必要)を買収し、新たなブランドで低価格タイヤを販売を行いたい。中国などの新興国では地元ディーラーとの関係が重要であるため、新たに着手する場合はスムーズに進まない恐れがあるため、地元ディーラーに強い中国メーカーを販社ごと買収して、全て任せる方法を取りたい。
これによって、中国メーカーに対抗することが可能となり、売上額の増加が期待できる。
またこのことが低価な原料の入手に繋がるため、原価率の低下につながると考えられる。

一方、先進国等の高品質のタイヤに関しては、再生タイヤなどを用い極力原価の高騰を抑えながら販売を拡大していく方向で進めていきたい。
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【大前解説】
●まずブリジストンは世界1位のタイヤメーカー。時価総額も2兆6000億以上。2位がミシェラン。
●世界のタイヤ市場は08年までずっと右肩上がりだったが、リーマンショック後に低迷。
 理由は自動車の販売不振で自動車産業とほぼパラレルになっている。
●よって、ブリジストンも例外でなくて今まで純利益が1,500億円も生み出す超優良企業であったけど08年からは利益を出すのが難しくなっている。
●セグメントを見ると、北米と日本で約8割。要するにBRICSなどが弱い。
●なぜ、弱いのかという理由は、ブリジストンはトヨタなど日本車と組んで販売しているのでトヨタが新興国に弱いので、ブリジストンも弱くなってしまう。
●言いかえれば、世界1位になれたのもトヨタが世界1位になったから。一緒に伸びてきたと言える(これは悪いことではない。今までは大成功してきた)。
●ところが、今の自動車生産台数は北米がどーんと下がり中国が急激に伸長。その他ブラジル、インドなども急成長を遂げている。
●近年のトレンドとして、世界に占めるタイヤビッグ3(ブリヂストン、ミシェラン、グッドイヤー)のシェアが2000年をピークに下がり続けている。
●米国市場においても中国のタイヤメーカーのシェアが急増している(04年:4.7%、08年:16.7%)。
●リプレイス用のタイヤは低価格タイヤに移り出していたり、中国車や新興国車が伸長すれば益々中国タイヤメーカーが加速度的に伸長すると考えられる。

よって、ブリヂストンが取る戦略としては、
●中国タイヤメーカーを買収する。
●この際に、技術提携は絶対にしない。東洋ゴムは技術提携したハンコック(韓国タイヤメーカー)が低価格タイヤを販売し、完全に寝首を掻かれている。同じ轍は踏んではいけない。
●33.4%、もしくはマジョリティーを取り、可能であれば100%で買収をする。
●そして、別ブランドでリプレイス用のタイヤを新興国向けに販売する。
●最終的には、中国だけでなく伸長している新興国(ブラジル、インド、インドネシアとか)のタイヤメーカーをどんどん買収していく。
●ブランドは複数(プライベートブランド、リプレイス、OE)持つ。

【反省・まとめ】
今回は良く考えられて議論も出来て、「中国だけ攻める」といった回答に留まらず至る所の新興国の現地メーカーをどんどん買収して行く、という結論にロジカルに導き出せたのはとても良かった。一方で技術提携は寝首を掻かれる、という危険性を理解していなかった(自分としては技術提携でなく、丸ごと買収にするつもりだったけど)。
BRICSなど低価格との戦いは今後もどの産業でも行われていくだろうが、ライセンスを組むということなどは慎重に進めてGoサインの時は一気に行うことが良いだろうと感じた。

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