2009年6月27日土曜日

『断る力』

勝間和代の『断る力』を立ち読みしたが、かなり違和感を感じた。

人間にはキャパシティーがあるので、すべてを行うことはできない。それ故、取捨選択が必要であると思う。これは間違いなく真理。企業でも昨今生き残るための選択と集中が行われている。
ランキング2位のところにこの本があったので、初めて手にとって読んでみたが、腑に落ちない。

まず、勝間さんはこの「断る力」を身につけることで、自分の軸を作ることを勧めている。悪いことではない。共感もできる。スペシャリストになるには手を広げすぎてはダメだから。
しかし、20代後半までに「断る力」を身につけて自分の軸を作ることを勧めていることは、腑に落ちない。

現在、多様化している世の中では単なるスペシャリストは生きていけなくなると思う。新しいものに取って代わられる上、それしかしらないとコミュニケーションが取れなくなる。これを文字で表すと「I型人間」(縦軸が深さ)と言うらしい(「組織と経営」で学んだ)(*1)。
では、どういう人間が求められるかと言うと「T型人間」(横軸が知識の幅)。あらゆることを知りながら、独自の専門性も兼ね備えている状態。さらに理想なのは「π型人間」。専門性が2つ以上ある状態で、かなり幅広くコミュニケーションが取れるし、これからのリーダーには絶対不可欠になると思う。

故に、早々に(20代で)専門性を高めてしまうのは、少し待てと言いたい。

ちなみに、勝間さんはマッキンゼー時代(約5年勤務)あらゆるジャンルの仕事を断らずに手がけ、夜な夜な仕事に明け暮れていた。つまりかなり知識の幅「-」は広いだろうし、マッキンゼーの中の同期で一番早く出世したくらいだから、その深さも世間一般よりは深い。さらに銀行勤めもしていたのだから、いわゆる「T型~π型人間」と推察できる(*2)。
その勝間さんが、より専門的になるために「断る力」を発揮するのはいいけれど、知識の幅のないであろう20代の人間が「断る力」を身につけてしまっては「I型人間」が増えてしまう。
それよりも、自分の苦手な分野でも最低限の知識を身につけるなど、知識の幅を広げるほうが良いと思う。自分であれば金融とかITとか。

ゆとり教育で育った昨今の20代が「断る力」とか「WB(ワークライフバランス)」とか言い出したら、日本はろくな人間が育たないと思う。勝間さんには悪いがあまり売れないで頂きたい本と感じた。 と言うよりも良く売れてしまうのは何も考えていないひとが多いということの裏返しか・・(まぁ、販売戦略的には良いんだけど・・・)。

恐れ多いが、当の本人はこのあたりのことも十分に承知のことと思うが、雑誌で取り上げられたり大文字の活字になるのは、このあたりのフレーズになるので、マスコミに大きな責任があると改めて再認識した。マスコミに踊らされる生活はやめよう。それこそ、「断る力」を発揮するときだ(と思う)。

2 件のコメント:

Hacci さんのコメント...

「断る力」読んでみたい。てっきり「Noと言えない日本人」的な内容かと思ってたけど、全然違いそうだね。むしくんに一票。

mushimaru さんのコメント...

全国一律はやっぱ駄目ね。年齢とか状況とかによって個々に必要なものは違うから、それに合わせないといけないね。
One to Oneマーケティングもその発想だね。